永年団員紹介

◎ これまで紹介した永年団員 ◎ (2021年現在)
29年目奥 麻衣子・西 由香里・原 直樹 27年目安永 奈緒
26年目草野 剛 25年目伊藤 雅典
24年目鈴木 ちひろ 23年目岡田 隆志・木村 公美・松下 憲司
22年目泊 圭佑・中原 理恵 21年目疋田 亜沙美
19年目江田 満・杉本 雄基・須藤 久法 17年目末廣 善行・森田 今日子
16年目山崎 友嗣 15年目石永 純二・田中 美帆・篠原 由依
14年目鳥越 友衣 13年目高田 怜・脇之園 舞
11年目黒土 莉香子・高木 健斗 10年目畑間 千嘉・鶴崎 円・山本 耕輔 new

29年目

奥 麻衣子

 練習中、団長の指示をこだまのように反復し、団員に”指差し指示”をしている助監督の1。だが、いざ自分の出番になるとささやくような声しか出せなかった。第5回「きょんちゃんと福福かっぱ」で、洋行帰りのシャレたかっぱになり、「カッパはカッパ、人間は人間よ。」と仲間をいさめる時に初めて舞台で大きくセリフを言えて、感激したのを覚えている。世間話は得意なのだが、体が固く不器用で利府や踊りを覚えるのが大変。でも、劇団に対する愛情は人一倍強く、決してめげない。かなり個性はなので、それをもっと生かしたいのだが、出番になると、石のように固まってしまうのが惜しい。けれども、出番以外は元気にみんなに指示をとばす、欠かせない一員である。

西 由香里

 15年前、彼女の「シンクロ」のパフォーマンスを見た時に、文字通り”目からウロコ”を体験した。小柄な体をいっぱいに使った迫真の演技に心の底から笑い、そして涙が出た。現在、”ビッグ”になってシンクロには無理があるが、真っ赤なドレスに身を包んだ「オペラ」で本領発揮している。台湾公演でも評判になり、ある保護者から「自分の娘を日本に留学させたら彼女の様にしてくれるか」と訊かれた。自称「大女優」の誇りを常に持ち、おそらく団員で一番多いセリフを、まっさきに覚えてくる。天真爛漫、いつも面白いことをしでかして、笑わせてくれる。本当はお姫様のようなヒロイン役を夢見ているが、どんな役にも体当たり。みんなをひっぱる欠かせない一員である。


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原 直樹

 一歩練習場に入った時から、彼はひとつの役を円実いるのではないかと思う。はちきれる様に元気で、団員にも大人気である。それが、他の場面で会うと、まるで別人である。家では音楽も聴かないし、台本を開くこともない。声のトーンもまるで違う。チャンチャンの事は、チャンチャンの中だけで完結している、という感じである。ともかく、演じることが楽しくてたまらないといった様子を見ていると、こちらまで楽しい気分にある。現伊奈演技が持ち味の彼が、悲しさや寂しさを表現するのは少々困難だったが、第6回「の・らキャット」の黒猫「ルイ」役で、特訓(?)の末、見事に切ない心情を演じきったシーンは、今でも熱く胸に残っている。10年以上のつきあいの我々にとっても、何かしらミステリアスな魅力をもつ彼は、欠かせない一員である。

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27年目

安永 奈緒

  この個性、揺るぎない存在感は、見逃せない。特に、「きよんちゃんと福福かっぱ」のラストシーン「七福神」の弁天様を演じた時の、福々しい穏やかな笑みは忘れられない。第10回「ホットドッグストーリー」の美容師役の時も、もう一人のカリスマ美容師役との対照的な演技、互いの存在感を光らせて印象的だった。初舞台「3年ねたろう」では、他の団員について人形のように出てきたが次の「アリノと4 0人の盗賊」では、舞台上ひとリでマリをつき、団員紹介の時も客席に向かって深々と一礼し、その成長ぶリにびっくりした。以来、ミスをミスと気づかせない堂々とした演技には定評がある。重鎮であり、欠かせない一員である。

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26年目

草野 剛

 第8回「怪盗ル・パン・チョス〜チュウ儀編〜」のカッコイイ3人組みの怪盗になったハンサム君たちを憶えている方がいたら、私はとてもうれしい。スケート靴をはき、黒マントをさっそうとひるがえして登上した3人の、真ん中にいたのが彼である。初舞台「アリババ」の中で、「わたしたちは、インターナショナル旅の一座です。」というセリフを満面の笑みで言い、トランペットを吹く役をした。あの時も、コカコーラのお兄さんをモデルにしたつなぎの服が、とても似合っていた。「会話」の難しい彼だが、第10回「ホットドッグストーリー」では、保安官として、「名前は?」「家は?」「家族は?」と、相手の答えを待って次々と会話を進めていく役を、見事にクリアした時の感激は忘れられない。律儀な演技が光る、欠かせない一員である。

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25年目

伊藤 政典

 入団して初めての役は、第5回「きょんちゃんと福福カッパ」のガータローというカッパの役だった。ガータローは人間のきょんちゃんと身振りで会話する。今でこそ大きな声でセリフを言う彼だが、当初はほとんどしゃべらず、話しかけてもうつむいて黙っていた。
次の「の・らキャット」では、のら猫タウンの酒場に出入りする流しの役で、得意のアコーディオンを生き生きと奏でて大きな拍手をもらった。第11回「稲荷節~おんみょう爺さまとコン吉の巻」では、お人好しで孤独な爺さまの味を出して好評だった。人柄の通りまじめでおだやかな役が似合うが、更なる成長を願って、第14回「の・らキャット~船旅編~」で初めて悪役に挑戦し、いばった言い方や声色を特訓した。2部の和太鼓のバチさばきには定評がある。絵も上手、楽器演奏もこなす、チャンチャン随一の多芸多才。欠かせない一員である。

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24年目

鈴木 ちひろ

 セリフや踊りは憶えるのだが、一本調子で動きがかたい。ステージでは、どこか自信のない様子でいつもうつむきかげんで衣装をさわっていた。周囲の強い個性の中にあって、どうしてもうもれてしまう。転機は、8年目の第13回「ナマムギナマゴメ なまはげちゃん」でおとずれた。シナそば屋の中華三姉妹のひとり、ファイヤー・リーの役で、「燃えよ、ドラゴン」の曲に合わせ、中華鍋とおたまを両手に持ち、カンフーもどきの動きでりりしく踊ってみせた。自信を得たのか、セリフの声も大きくなり、演技も堂々としてきた。
 昨年の「ごすこい!さくら繁盛記」では、けなげだけではない、強く潔いさくらを好演した。セリフを”読む”のではない、ド根性ぶりを発揮して、体当たりの演技を望みたい。めざせ、大女優!期待のかかる、欠かせない一員である。

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23年目

岡田 隆志

 しばらくの間観客だった彼は、学校の文化祭の劇で自信を得たのか、その翌年に入団を決意した。そして3年目、第9回「たつの子三太とてんぐどん」で、三太の役を務めた。高いところが苦手で、ステージではいつのまにかじちじりと後ろへ下がっていたのに、何と、会議用の長机を2段に積み重ねた上にのぼって練習した。顔を真っ赤にして、ものすごい気合で耐えていた。この状態でセリフを言い、雨を呼ぶ太鼓をたたくのだ。責任感と誇りが彼を支え、見事に大役を果たした。ふだんから正義感が強く、正義の味方の役が多かったが、第10回「ホットドックストーリー」で初めて悪役に挑戦し、ならず者(犬)の恐ろしさを彼らしく全力投球で演じた。以来、正義も悪役も両方こなす熱血俳優、スタッフにもよく気合を入れてくれる欠かせない一員である。2部のパフォーマンスでも、リズムがずれつつ熱演し、個性をいかんなく発揮している。

木村 公美

 ささやくようにセリフを言う彼女だが、決められたことを忠実にきちっとこなしてくれる。おそれ多くも、かのオードリー・ヘップバーンの映画「ローマの休日」を意識して作った、昨年の「チュウ義ものがたりⅡロマンンな休日」では、長身ながらとても愛らしいネズミの女王様を演じた。チャンチャンの団員には珍しい運動神経のよさを生かして、下町ネズミたちのストリートバスケに乱入した場面では、2投ともゴールを決めた。実は、練習でもゴールを外したことがない。ボールパスもうまい。ふだんは、ごく少数の気に入った友だち以外あまり人に関わろうとしない彼女だが、今回、同じ絵師を演じる後輩をリードし、援助する姿に驚いている。いつのまにか、頼りになる先輩に成長していた。2部のパフォーマンスでは、難しいジャンガラのリズムをこなしている。もの静かでふわりとした雰囲気が持ち味の、欠かせない一員である。

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松下 憲司

 初舞台「招福 鬼吟醸」では、子オニの役だった。いつもなにか、見上げるような青年になった。発語はないが、劇に流れをよく理解して、演じること、舞台で表現することが大好きな、根っからの役者である。練習も本番も、役になりきって楽しんでいる。はじめはたびたび起こっていた。自分でやりたいようにやって、指示されるの嫌いだった。スタッフが手をとって教えるようなことをすると、はねのけられていた。今では、にこにこと素直にきいてくれる。今回、泣くシーンが多かったのだが、ついついすぐに笑ってしまうので、指摘されては泣く努力をしている。いつもより出番が多く動きも複雑だが、自分でよく把握していて感心する。体のバランスをとるのが苦手で、長いまといをもったり、高いところに上がるのに苦労しているが、とても真剣である。劇でも2部のパフォーマンスでも、インパクトのある役者であり、欠かせない一員である。

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22年目

泊 圭佑

 家族といっしょに公演を見に来て、入団を決意したのは、中学部3年生の時。当時、下に小学生の妹と保育園児の弟がいて、仕事もあり多忙なお母さんを、お父さんが「踊りの好きな息子にぴったりの場所。協力するから」と、後押しした。初舞台は第8回定期公演「怪盗ル・パン・チョス~チュ義編」チュウ義のネズミの役だった。大きな時計を背中にしょって時間を止め、怖い番犬から3人の怪盗を救う。「と・ま・れー!」と、体じゅうから精いっぱいの声をしぼり出した。自分流にちょっとカッコつけながら、リズミカルに踊る姿は定評があり、ダンサーとして団員たちをひっぱている。第13回「ナマムギ・ナマゴメ・なまはげちゃん」では、ふだん弱虫、泣き虫のなまはげちゃんが、からだをはって百年に一度の大なだれから町の人を助ける大役を見事に果たした。2部のパフォーマンスでも、和太鼓、獅子舞、ダンスと、大活躍である。小柄ながら筋骨たくましく、道具運びや、積み込み積み下ろしの仕事を、誰よりも率先してやってくれる。自分が一番重い物を運ぶ。気はやさしくて力持ちの、頼れる青年に成長した。

中原 理恵

 すっとぼけた雰囲気が、いい味を出している。練習中、何かしら演技や踊りの注意を受けると、急に足がふらついてビョウキになたり、うまくできないわけをセリフより雄弁に述べて、これまた「女優」である。小柄で細く、はじめは子役を多かったが、最近はしっかりリーダー格のご婦人役にはまっている。旅一座の座長や、踊りのお師匠さん、旅館の中居がしら、ネズミの女王さまを守るSPのリーダーなど、要所をしめている。2部の祇園太鼓では、入団当初、握力・腕力共に不足ぎみで、バチをしっかり握れずフワフワと泳ぐようにたたき、後方に倒れそうな感じだった、今では、ずぶんと強くたたけるよになった。
8年前の定期公演の2部で演じた「紅白歌合戦」のパフォーマンスでは、「惚れっちゃったんだよ」を歌う都はるみを模した「都あけみ」を熱演、3年後のグアム公演では、翌日の地元紙に、この都あけみの大きな写真入りで、チャンチャン公演が報じられた。今でも、特にお年寄りの施設では大人気である。か細いボディにパワーと根性がみなぎる、「女優」である。

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21年目

疋田 亜沙美

 初舞台は、第9回「たつの子三太とてんぐどん」の、いたずらをする子てんぐの役だった。(正直に言うと、第8回「怪盗ル・パン・チョスチュウ義変」の沖縄公演で友情出演。)劇でもパフォーマンスでも、練習を楽しんではいるようだが、やる気が空回りして素直になれない彼女がいた。指示されると反対のことをする。友達と仲よくしたくていたずらをする。個性を生かそうにも、舞台上で形にするには、なかなか難しい。結構厳しく指導されたが、めげずについてきた。その気丈さを生かした、社交ダンス「ジャイブ」のパフォーマスで、ペアの相手を手こずらせる役が、ぴたりだった。今でも、毎回違った動きで、相手役を手こずらせて遊んでいる。自信がついたのか、いたずらは激減し、ずいぶんと素直になった。「勝手にワルツ」では、皆と合わせて、きちんと3拍子のリズムをたたけるようになった。劇でも、今回の「おかねさん」のようにいつかは「ASAMIストーリー」を作らなければいけないと思い始めている。

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19年目

江田 満

 第11回定期公演「稲荷節~おんみょう爺様とコン吉の巻~」で、怪しいくすり屋を演じたのが初舞台。テレビの前で踊ったり自分の世界で何かになりきるのは得意なのだが、なかなか舞台では生かされない。ふだん、楽しくおしゃべりはするのに、セリフが出てこない。でも、袖では台本を握って「監督」になりきって楽しんでいる。そして、自然体の個性を発揮して、落語家の弟子や駕籠かきで、ユニークな味を出してきた。昨年は、初めての悪役をはりきって演じ、いつもより大きな声も出せるようになった。味のあるおとぼけ役の似合う役者に成長しつつある。 こう、ご期待。

杉本 雄基

 チャンチャンジュニアの部「とことこクラブ」の第1期生。小学校5年生だった。「とことこ」で2年間、チャンチャンで10年間、親子で二人三脚、2部のパフォーマンスでもがんばってきた。かっこうつけのチャラオ君に見えるが、根はやさしく、陽気で、いつも前向き。その、ポジティブ思考は周囲を元気づけてくれる。第17回「泣き虫ドラゴン」の宮崎公演の打ち上げで、「ぼくは、いつ主役になれますか?」とスタッフにつめよって、次の第18回定期公演「禁断の豚ジェントル・トン」の主役をゲットした。少々キザな役で、本領発揮。今回も、スター気取りの神事jj映画俳優のやくで、自分の味をよく出している。

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須藤 久法

 一匹オオカミ風の雰囲気を醸し出して、だれも寄せつけようとしなかた。
初舞台は、悪役「ねずみ小僧」のひとりだったが、練習では出番になっても出ようとしなかった。でも、よく観察はしていたようで、本番は、しっかりと演じ、生き生きと踊っていた。人から指示をうけるのは、大嫌い。かみつかんばかりに、不快感をあらわにしていた。
2部のパフォーマンスで、「シャルウィダンス」を優雅に踊って自信になったのか、それから徐々に、氷が解けるように穏やかになり、笑顔を封印しているかのようだった表情も柔らかくなった。思わず笑顔を見せて、「しまった!」と、平常心を装う。誇り高き若様である。

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17年目

末廣 善行

 チャンチャンジュニアの部「とことこクラブ」の第1期生としてきた時は小学3年生で、よく泣いていた。お母さんが幼い弟妹もつれて西鉄バスを乗り継いで来ていた。あれからの13年、昨年二十歳になった。セリフもダンスもよく覚え、チャンチャンの中では珍しく器用な役者であるが、ここ数年、かなり自分で演技やセイフの言い方を工夫して急に役者らしさを増してきた。特に昨年の「ワンダフルホテル」では、「ブラックパラダイス」の悪役ホテルマンに徹して大活躍。満を持して今回の主役である。諸事情で2部のメンバーには入ってないが、パフォーマンスも大好きで、公演ではいつもソデに座って食い入るように見つめている。その熱意を生かそうと、今回「善吉」に和太鼓や獅子舞の演技を取り入れた。太鼓では狐の雰囲気を出そうとして初心者には少々難しいリズムになったが、懸命に練習している。

森田 今日子

 第13回「ナマムギナマゴメなまはげちゃん」が初舞台。役者という点では不器用で、役に入りこめずに、舞台上で傍観者のように立っているか、照れかくしに笑ったり他の役者の世話をしたりする。歌や踊りは、大好き。はじけるように元気いっぱいおどる姿は、周囲を明るくしてくれる。初めは声があまり出なかったが、叫ぶシーンでは必死に大きな声を出すようになった。いつもなら、練習中、出番以外は袖でおしゃべりに興じているが、今回は固くなったまま緊張して出番を待っている。セリフを一生懸命おぼえようとしている。その一途さこそ、のらシリーズの本髄。がんばれ今日子!台本が遅れてごめんね。もうひとりのドラは、気合の入った個性派の相棒。本番どう出るか、保護者もスタッフもどきどき。
 サファイヤ!ルビーをよろしく。

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16年目

山崎 友嗣

 初舞台は、第14回「のらキャット船旅編」だが、翌年の「どすこい!御宿さくら繁盛記」での、相撲部屋の新弟子「めだか池」のマイペースな奮闘ぶりが、印象深い。セリフは、ほぼ「囁き」で観客まで聞こえないのだが、ちゃんとセリフを覚えて言っている。「月夜の金貸ポン」では、頼りない同心役で、せりふをカードにして御用提灯のように掲げて観客に見せ、めくりながらしゃべった。味のある演技派!であり、もっと彼を生かす役を考えたいといつも思っている。和物の着物姿も、洋物のしゃれた服も粋に着こなし、よく似合う。
本来ひょうきんで冗談も大好き。ただし、納得がいかないと、てこでも動かない。彼には彼の時間が流れていて、誰もそれを変えられない。そこが彼の魅力でもある。

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15年目

石永 淳二

 年々おそくなっていた台本の遅れが、最もひどかった昨年。救ってくれたのが、主役になった彼の熱意だった。台本を渡した翌週には、もうセリフを覚えていた。その後も度々セリフが変わったが、きちんと覚えてくる。頑固で変更の難しかった彼の、並大抵でない努力に、スタッフも他の役者も引っ張られて、何とか公演を迎えられた。今年は、音楽事務所のメンバー2で、にらみを利かせる役である。終わりに近い場面で踊るダンスの振り付けは、彼自身で考えた。セリフも踊りも、決して器用にこなすタイプではなかった彼の成長は、身近な我々に、さりげなく人の可能性を教えてくれる。

田中 美帆

 はち切れそうな勢いの元気な演技が、彼女の持ち味である。軽快なダンスを踊る明るく元気な役が多いが、第21回「大福長屋のトンテンコ~ン!」では、大工の善吉を助けようとする狐のお紺ちゃんを、捨て身で演じきった。練習中、「コ~ン!」という叫び声の特訓を受け、ソデでひとしきり膝を抱えてすすり泣いたあと、殻を破ったようにひとまわり大きな役者になった。大火事の中、善吉を追って声がかれるまで叫び続け、雪雲になって火を消した彼女の一途な姿に、不覚にも拙い台本を書いた門馬自身が涙してしまった。「演技」ではなくにじみ出る純真さが、薄っぺらな台本を飛び越えて胸を打つ。

篠原 由依

 どちらかというと控えめな彼女の女優魂に気づいたのは、たぶん、第16回「チュウ義物語 ロマンな休日」の時。台本を丸覚えして、練習中に「嬉しくてたまらない」といった感じで、ソデで全部のセリフを言っていることにある日あるとき気が付いた。「目立ちたい、認められたい。」より、とにかく「お話が好き、劇が好き。」。彼女こそ”演技ガール”である。第19回の「月夜の金貸し ポン!」では、金貸しおカネさんの心を動かす無邪気なタヌキの子を演じて、涙を誘った。セリフもダンスもたどたどしいが、お話にのめり込む姿はまさに「女優」。今後の成長が楽しみである。

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14年目


「ワン!ダフルホテル」より

鳥越 智依

 初舞台は、第16回「チュウ義ものがたり ロマンな休日」のミュージシャン役。滑舌よろしく長文のせりふもツルっと言ってのけるが、早口で棒読み。せりふも動きも前のめり。愛だの恋だのにはほぼ無関心に見えるクールさが、第20回「ワン!ダフルホテル」での主役の調理人が片思いする女優の役にぴたりだった。
今回は、役にのりきれない様子で、しばらくは練習が始まっても浮かない顔。AKBとおしゃれが大好きだという彼女に、ほんの一瞬だが踊りにAKBの曲を入れ、合わせて、奥さんが素敵な衣装をデザインしてくれて、一気にクール&ビューティーな芸人になった。とたんに笑顔がもどり、「おおどり一座」を仕切っている。

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13年目


「下町スキャット さる・る・る~」より

高田 怜

 初舞台は、第17回「泣き虫ドラゴン」の寺子屋の生徒役だった。まだあどけなさの残る中学生で、しばらくは子どもの役の方が多かった。第19回の「月夜の金貸しポン!」では、不器用で孤独な”おかねさん”の、かたくなな心を溶かす純真な子ダヌキを好演した。本人は、第21回「大福長者のトンテコ~ン!」の悪役、カラフルな上着の袖をひらめかせて踊る天狗の役が気に入っていたらしい。第24回「下町スキャット」では、夢を追いかけた田舎から歌手をめざしてやってきた青年シンガーを、先輩と二人で熱演した。いつも全力投球で、せりふを全身からふりしぼる。
 2部のパフォーマンスで獅子舞や和太鼓もがんばっているが、社交ダンスのダンゴならぬ「ザ・ダンゴ」も印象に残る。


「泣き虫ドラゴン」より

脇之園 舞

 第17回「泣き虫ドラゴン」でだんご屋の役に始まった彼女の役者人生。翌年の「禁断の豚ジェントル・トン」ではブティックの店員役で、ファッションショーのモデルウォーキングの猛特訓を受けることになった。当時は食べ盛りの高校生で体重はピーク。家族に「きれいな衣装が着られなくなるよ。」と言われて一念発起。何と、ダイエット番組に出てくるような20キロの減量を成し遂げ、多少の波はあるものの、今もほぼその体重を維持している。もちろん家族の協力があってこそだが、本人の努力もすごい!練習中に指導されたことは、家で繰り返し練習してくる。
 2部のパフォーマンスでは、前出の高田怜さんとのペアで踊る「ザ・ダンゴ」や「パッションガール」で持ち味を発揮し、情熱を爆発させている。

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11年目


「のら&ドラオープン ザ ドリーム」より

黒上 莉香子

 10年前、名前を尋ねてもうつむいてダンマリを決め込んでいた。数か月してもほとんどしゃべらず、ようやく口を開いても、耳をそばだてて近寄らないときこえない。ダンスは得意で、リズムに乗って笑顔も見える。初舞台は、第18回「禁断の豚ジェントルトン」。ブティックの店員で、モデルウォーキングを盛り込んだダンスでポーズも決まっていた。そrから早や 10年、役になりきって大きな声でセリフをしゃべる、頼りになる役者に成長した。改めて、かれらの可能性と、舞台の持つ魅力に気づかされる。
2部のパフォーマンスでも、ダンスで生き生きと本領発揮!ところが、食べ盛りのこの10年、急成長したのは役者魂だけではなかった。とくいなはずのダンスにもキレや動きに影響が出る。何より健康のために!夢をもってともにめざそう、「健康BMI」!


「月夜の金貸し ポン!」より

高木 健斗

とろけるような笑顔の美少年は、劇が大好き。大先輩の松下先輩を彷彿とさせるのめりこみを見せている。流れもほぼ把握していてソデで一緒にセリフを叫んで、周囲から「シー!」とたしなめられる。大先輩と違うところは、演者ではなくあくまで鑑賞する側であり、なかなか役にはのめりこめない。もっぱらそれを役どころにする。環境に慣れるまで時間がかかる。最初は、知っている人以外みな敵!とばかりに警戒心をあらわにしていた。初めての練習場所や公演場所・・。彼にとって想定外だらけのチャンチャンの活動は、修行の10年であたにちがいない。入団2年目の札幌公演で飛行機に乗るのが大変だったが、その後も経験を重ね、昨年の石川公園では拍子抜けする程平気だった。毎年の課題をひとつひとつクリアして、練習中ず~と笑っている今の彼がある。

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10年目


「雪ん子ちゃ〜んあ・そ・ぼ!」より

畑間 千嘉

 入団したのは高等部3年生の時。本人の雰囲気とは真逆の盗賊役がユーモラスで可愛かった。
それから何と6年目、20代前半の若さで相撲部屋のおかみさん役に大抜擢!せりふも動きもおっとりした雰囲気で、5人の力士を支えるおかみさん役にぴったりだった。縦じまの粋な着物も似合っていた。かなり一本調子だが、ゆっくりした言い回しで長めのせりふも確実に覚える。チャンチャンにはよくある急な変更にも柔軟に対応できて、頼りになる役者に成長した。


「雪ん子ちゃ〜んあ・そ・ぼ!」より

鶴崎 円

中学部1年生の入団時からすでに長身だったが、初舞台での赤い着物にたすき掛けした姿に始まり、振袖を着て三味線を持つ芸人役、だんご屋の仕事着に、キツネの巫女さん姿と、すらりとした和服姿が印象に残る。舞台への情熱は熱く、覚えたせりふは大きな声で叫ぶので、毎度のことながら周囲はびっくりどっきり!たまに他の役者に気を取られて上の空なのか、突然小さなささやき声になり構えていた我々は拍子抜けすることもある。「大」か「小」。今のところ「中」を持ち合わせない円さんの持ち味を生かす役を、毎回思案する。


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  「雪ん子ちゃ〜んあ・そ・ぼ!」より

山本 耕輔

 一歩練習場に入った時から、彼はひとつの役を円実いるのではないかと思う。はちきれる様に元気で、団員にも大人気である。それが、他の場面で会うと、まるで別人である。家では音年々ふくよかな体形になるものの、目のクりっとした童顔の青年の初舞台は、お寺の小僧さん役でその後も子役が多かった。特に、仲良くなった「雪ん子ちゃん」を命がけで助ける神社のこま犬の役は、力自慢の彼のはまり役で印象に残る熱演だった。2部のパフォーマンスも大好きで、自分以外の気に入った役も、とてもよく見て動きをほぼ覚えている。ただし、太鼓もダンスも人と合わせることが難しい。スタッフも悩むところであるが、道具の出し入れをいつも積極的にやってくれる頼もしい一面もある。